母親との会話にイライラ
先日,実家の母親と電話で話をしました。
もう 1 年以上帰省していないのですが,月に 2 ~ 3 回くらい電話で話をします。
母と話をしていると,しばしば感じることがあります。
それは「母親の話はポイントが分かりづらい」ということです。
長い時間をかけて一通り聴いたものの「結局何が言いたかったのか分からなかった・・・」ということもしばしば。
それにプラスして,前置きも長いんです。
まぁこんな事もあって,情けないことですが,聴いていてイライラすることもあります💦
イライラするのは「勝手な」期待があるから
では,そのイライラのメカニズムについて説明しましょう。
イライラしてしまうのは「母親が簡潔にわかりやすく説明してくれるだろう」というわたしの期待があるからです。
その期待と現実との間にギャップがあるからイライラしてしまうのです。
ところがこの期待は,わたしが勝手に抱いたものなんですね。
「勝手に」というところがポイントです。
身近な人には甘えがち
このように,ひとは自分に都合の良い期待を勝手に抱きがちなんです。心理学の世界では「一体感(願望)」もしくは「母子一体感(願望)」と呼ばれています。幼児期の子供が母親に抱く願望であることがその名称の由来です。
この願望は自分にとって身近な相手にほど抱いてしまいやすいという特徴があります。
たとえば親子や夫婦がその代表です。
どうですか?
奥さんや旦那さん,お子さんに対して自分勝手に期待を抱いていませんか?
たとえば,夫婦の朝の会話で,旦那さんが「今日は帰りが遅い」とだけ説明したとしましょう。
そこで奥さんはこう思うわけです。
- それって晩ご飯がいらないということ?
- 明日子供の運動会で朝が早いけどそれには行けるの? などなど
ところが当の旦那さんは「誰々の送別会でご飯は食べてくるけど,明日の予定に支障ない」というつもりで話しているので,それを察してくれない奥さんにイライラするのです。
どうですか? やっちゃってませんか? 自分勝手な「つ・も・り」。
私も耳が痛いです💦
今一度,自分の胸に手を当てて考えてみてください
ところがこうやって言葉にして説明すると,わたしたちは「ちゃんと話してないから分からなくて当然だし,言わなくても分かるなんて,そんな高飛車な事思ってないですよ~」とあっさり否定します。
でも,実際にはやってしまってるわけなんですよね~
無意識に💦
甘えはあって当然ですが,コントロールできた方が良い
さて,母子一体感と逆の言葉もあります。
それを「離別感」といいます。
離別感の強い人は,ベタベタ甘えもせず,自分は自分,人は人,自分の課題は自分で乗り越える心意気があり,そのための努力もします。
なんて素晴らしい人なのでしょう! と思いませんか?
さて,ここまでの話を聴くと,母子一体感は「悪」で,離別感は「善」のように感じるかも知れません。
でもそこが落とし穴です。
一体感も離別感もバランスが大切
何事もバランスが重要です。
適度な母子一体感は,人間関係を円滑にしてくれる潤滑油として働きます。
期待や甘えは人間らしさでもありますし,適度であれば,人間関係にとってプラスに働きます。たとえば男性は,女性から頼られると嬉しくて頑張っちゃう人が多いのです。もちろん寄りかかりはよくありませんので,気をつけて下さいね。
一方,離別感が強すぎると,まるでロボット同士のような無味乾燥した人間関係になってしまいます。
まずは気づくことから
大切なのは,その時々で自分の立ち位置に気づくことです。
- 勝手な期待を持ちすぎてはいないか?
- 期待していることをちゃんと伝えたか?
- それでも分からない,わかり合えない事もあると理解しているか? など
まずは気づくこと。
そしてどうすれば良いかを考えるクセをつけること。
これを積み重ねていけば,いずれは自分の母子一体感をコントロールできるようになります。
わたしは日々訓練中です(笑) というか終わりは無いと思っています。
夫婦は努力が必要な家族 であることを忘れずに
実は,熟年離婚など夫婦関係の破綻は,こういった「分かってくれて当然」に長年甘えてしまった結果であることが少なくありません。多くは男性の側が甘えてしまっているようです。要するに既婚男性は,心して夫婦生活を営む必要があるということです(笑)って笑い事じゃありません。最近よく目につく光景があります。年配の夫婦で,旦那さんがすごく偉そうに奥さんに接しているのです。自分の言っていることが通じずイライラしている様子でした。もしかしたら母子一体感バリバリの旦那さんかも知れません。もちろん,夫婦は男女の関係ですから,どちらかが一方的にマズイということはありません。奥さんの側の努力が足りない場合もあります。いずれにしても夫婦は「努力が必要な家族」と思うことが大切です。親子はどこまで行っても親子ですが,夫婦は割と簡単に関係を解消できてしまいますから。
心理学からのプレゼント
さて,終わりに素敵な言葉のプレゼント。
私が実施する心理カウンセリングにおいて,とても重要な位置を占めるゲシュタルト療法というものがあります。その創始者であるフリッツ・パールズが,自身の療法を要約するために書いた言葉です。
あなたはこの言葉に何を感じるでしょうか。
~~~ ゲシュタルトの祈り ~~~
私は自分のことをし,
きみはきみのことをする。
私はきみの期待に応えるためにこの世界にいるわけではないし,
きみにしても私の期待に応えるためにこの世界にいるわけではない。
きみはきみで,私は私だ。
そしてもし偶然私たちが出会うことができたなら,
それはすばらしいことだ。
そうでないとしたら,
それはそれでしかたのないことなのだ。
母子一体感にからむカウンセリングは多い
夫婦や恋人同士など,男女の関係は心理学的にはとても面白い分野です。他にもお伝えできることがいっぱいありますので,機会があればまたお話ししたいと思います。実際,カウンセリングの現場でも,母子一体感にからむ課題は非常に多いんです。