こころのヒント

うつ病を思い出す その1

今回からしばらく,私がうつ病だったときのことを綴ります。心理カウンセラーとなっている現在の視点も時折交えています。今苦しんでおられる方や周囲の方にとって役立つ情報があるかもしれません。気楽にご覧頂ければと思います。

冬はうつ病を思い出す

冬の寒くどんよりとした天気の日には,今でもうつ病で辛かったときのことを思い出すことがあります。いちばん苦しかったのが2014年の1~2月。現在が2022年2月なので,もう8年も前のことです。

気持ちが辛くても身体は動く

あの頃は会社員をしてました。遡ること4ヶ月。精神科でうつ病と診断され,朝から晩まで全くエネルギーが湧いて来ず,会社に向かうことが苦痛でたまらい日々を過ごしていました。辛いとはいえ,物理的に身体を動かすことができないわけではありません。どんなに気分が落ち込んでいても,手や足は動かせるのです。だから身体にむち打てば,通勤,つまり身体を会社まで移動させることはできたのです。わざわざ「身体」と表現したのは,そこに健全な精神が伴っていないという意味です。

会社にいる時間が辛すぎた

会社の駐車場やロッカールームで出会う同僚達には,ひどく鋭気のない人間に映ったことでしょう。挨拶だって,消え入りそうな声でするのが精一杯。業務はろくに集中できず,ちょっとでも複雑なことになると思考停止に陥り,気持ちは混乱状態。ミスも沢山しました。数少ない自由時間である昼休みは,逃げるようにして自分の車に籠もり,食欲が全くないにもかかわらず,カロリーメイトにかじりついたものでした。

朝が絶望的にダメ

精神的に絶不調な業務時間をなんとかやり過ごし自宅に戻っても,うつの気分は収まることはありませんでした。唯一気分が安らいだのは就寝のときだけ。
「柔らかく温かいものに包まれていて安心だ」
「眠っているときだけは苦しさを忘れられる」
そんなことを感じてました。

でもどちらかといえば「夜は皆が休む時間だから,自分も休んで良いんだ・・・」という気持ちの方が強かったと思います。だから逆に言えば「世間が動き出す朝」は,私にとって最も調子の上がらない時間帯。起床時から通勤時間帯の苦しさは,どう形容すれば適切か分からないのですが,とにかく絶望的に気持ちが上がってこないのです。そう表現するしかないような感覚だったのです。

その2につづく


朝はいまだに気分が上がりにくい

今でも「気分が上がらない朝」を時折経験します。ただ「ひどくないので支障ない」というだけです。もしかしたら不登校のこどもたちや,ひきこもりの人たちの中には,私と同じような理由で「朝が辛い」人がいるかもしれません。

心に染みついたクセは簡単に変わらない

多くの場合うつ病は,当事者特有の感じ方や考え方が影響しています。心理カウンセリングでは,その辺りを一緒に探求し,解きほぐすヒントを探っていきます。しかしこれは,良い悪いの価値観で判断すべきものではありません。その人がこれまで生きてきた貴重な軌跡であり証なのです。「最大限尊重しつつ,生きづらい部分だけを修正していく」そんなアプローチが適切と思っています。

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