こころのヒント

うつ病を思い出す その2

前回に引き続き,私がうつ病だったときのことを,とりとめもなく綴ります。心理カウンセラーとなっている現在の視点も時折交えています。今苦しんでおられる方や周囲の方にとって役立つ情報があるかもしれません。気楽にご覧ください。

クスリは効くかもしれない

精神科でうつ病と診断され,お薬を処方されました。「パキシル」という抗うつ薬です。良い薬かどうかは別にして,有名な薬なのでご存じの方も多いでしょう。結論から言うと,私には効いたように思います。飲み始めて2週間くらいすると,どん底気分を脱し,動けるようになってきたのです。といっても,あくまで「最悪な気分ではない」くらいで,元通りという訳ではありません。その後,そんな曖昧な状態が長く続くことになります。

会社は休職した

うつ病が最悪の時期に会社を休職することになりました。最初は1ヶ月です。毎日が苦しく,崖っぷち気分だった私には,天からの助けのように感じました。ところが,心身を休ませるための休職なのに,休みに入った頃は「時間ができたから勉強しないと!!」とトンチンカンなことを考えていました。それで本当に心休まるなら良いのですが,むしろ義務感のようなものでした。そりゃぁうつ病になっても不思議はありません。しかし心に染みついた考えや価値観を,人はそう簡単に変えることはできないものです。うつ病になるべくしてなったわけです。

何か満たされない

休職期間中は,テレビや YouTube を観たりして,家でゴロゴロしていました。妻は働いているので,家では私一人です。十分な時間があり,何でもできる環境にありながら,いざそうなると,正直何をして過ごして良いかわからないものです。惰性でテレビや YouTube を観るのが関の山。それなりに楽しい瞬間はあっても,何か充実感がない。心の奥底で「こんなことしてて良いのだろうか?」と不安が渦巻いているのです。だからといって復職できるのか?と言えば,そうではない。そんなことしたらぶり返すだけ,と確信していました。「多少は動けるけど仕事はできない」「何をしても充実感がなく残るのは不安だけ」こんな気持ちをずっと抱いていました。うつ病休職者の一定数は,こんな人もいるのではないかと思います。

その3につづく


仕事が休息になる人もいる

意図的に休息するのは案外難しいものです。ちなみに,仕事が心身の負担になる人もいれば,(少なくとも精神的には)休息になる人もいます。ここは重要なところです。仕事が楽しい,心理学で言うところの「フロー状態」に入っている人は,仕事がそもそも負担ではありません。むしろ心のエネルギー源です。

何に夢中になれるか?

自分が夢中になれること(どういうときフローになれるか?)を知ることは,人生において大切な課題です。すぐに答えの出るものではないですし,時と場合によって変わるのが普通です。一旦見つかったからそれで終わりというモノではないのです。だから,日頃から自分自身を知ろうとする努力が必要です。心理カウンセラーは,そんな「自分を知る」ことのお手伝いをしてくれます。

楽しいだけじゃダメ

最後にひとつ。「楽しい = フロー」とは必ずしも言えません。私の例で言うと,YouTube は楽しかったけれど,充実感には繋がっていない,という点です。何か物足りないのです。不登校の子どもから「仕方なくゲームをしている」と聞いたことがあります。同じようなものかも知れません。一体何が足りないのか?人それぞれといえば,それまでですが,ある程度の共通点はあります。それはまた別の機会に触れましょう。

関連記事